コラム
2019年04月05日

故人が遺言書を残していた場合、どうしたらいい?遺言書の基礎知識

お父さんが亡くなり「遺品整理をしていたら遺言書が出てきた」、または「以前から遺言書を預かっていた」といった場合はどうしたらよいのでしょうか。遺言書は故人の意思が記された大切な書類です。遺言書の内容を実現するには正しい手続きをする必要があります。

この記事では遺言書の種類と、遺言書が作成されていた場合の相続手続きについてご説明します。ぜひ参考になさってください。

 

遺言書とは

誰にでもいつか死が訪れるものです。自分が死んだ後の財産をどうするか、面倒をみていた家族たちはどうしたらいいのか気になるものですが、自分が死んでしまった後では何も指図することができません。故人が生前に何も意思を表明していなかった場合は、遺族は話し合いをし、話し合いで解決しない場合は家庭裁判所の調停などを利用して故人の遺産を整理していきますが、これでは故人の意思が反映されず、また、遺産の分配が原因で相続人の間で争いが起こることになります。例えば子供が複数人ある場合に、生前に故人の面倒を最期までみてくれた長男夫婦に財産を多く残したい場合でも、相続人間の話し合いでまとまらなければ故人の願いは叶いません。

そこで、故人が亡くなった後に相続人間で話し合いをして遺産の分配方法を決めると争いの原因となるので、それを防ぐために、遺言書を作成して故人の意思を遺族に残します。

 

遺言書には3種類あります

遺言書には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言という3種類の遺言書があります。

自筆証書遺言

その名のとおり、自分の手で書いた遺言書です。遺言の全文、日付・氏名を自筆で書き、押印したものです。

なお、平成31年1月13日より自筆証書遺言の方式が緩和され、目録をパソコンで作成したり、通帳のコピーや不動産の登記事項証明書を添付することができるようになりました。

公正証書遺言

公証役場の公証人が作成した遺言書のことです。

公の機関で作る遺言書なので特別の事情がない限り遺言が無効になることはありません。また、公証役場で作成した遺言書の原本を保管してくれるので紛失や偽造の恐れがなく、自筆証書遺言よりも確実性・信頼性の高いものになります。原本は公証役場で保管しますがそのコピーは手元で保管することができます。

なお、遺言書の他にも、金銭の貸し借りの契約書や離婚の協議書など、確実に証拠に残したい書面がある場合には公正証書にすることが多いです。

秘密証書遺言

誰にも遺言の内容を知られたくない場合に作成する遺言書のことです。ただし、この方式による遺言書はほとんど作成されていません。

自筆証書遺言と同じく、自分で遺言書を作成しますが、自筆である必要はなく、パソコンで作成したり他の人に代筆してもらうことも可能です。その後、氏名は自分で書いて押印し、封筒に入れ封印をします。そして公証役場にて、証人2人の立会のもと、遺言書が自分の作成した遺言書であることを確認され、氏名・住所を伝え、公証役場が記録に残します。以上の手続きが済めば、遺言書は持ち帰り自分で保管します。

つまり、秘密証書遺言は、遺言書を作成した記録は公証役場に残りますが、内容について公証人が確認をしないので不備がある可能性が生じます、また、保管も自分で行うので紛失する恐れがあり、公正証書遺言に比べると確実性・信頼性に劣ります。

 

遺言書が作成されていた場合はどうしたらいいの?

故人が遺言書を残していた場合、遺言書の種類によってすべきことが変わります。ここでは、よく作成される自筆証書遺言と公正証書遺言の2つのパターンについて説明します。

自筆証書遺言の場合

自筆証書遺言が作成されていた場合は、家庭裁判所による検認の手続きが必要になります。

検認とは、遺言書の内容を確認する作業です。遺言書の存在を確認して偽造されないよう、相続人またはその代理人が家庭裁判所に行き、家庭裁判所の職員の立ち会いのもと遺言書を確認します。

注意が必要なのは、封筒に入って封印がされている遺言書については、開封せず、家庭裁判所に持っていくことです。勝手に開封すると過料という5万円以下の罰金の定めがあります。(民法第1005条)

そして検認が済むと遺言書に検認証明書が添付され契印を押されます。この手続きが終わってから銀行など預貯金の手続や不動産の名義変更などを行うことができるようになります。

なお、令和2年7月10日より法務局における遺言書保管制度がスタートいたします。この制度を利用して法務局(遺言書保管所)に遺言書を保管した場合には検認の手続は不要となります。

 

公正証書遺言の場合

公正証書遺言の場合は、公証役場が遺言の手続に関与しているので、家庭裁判所による検認の手続は必要ありません。

公正証書遺言に指定がされていればその遺言執行者が指定されていなければ相続人が、遺言の内容に従い金融機関などに公正証書遺言を持って行き、預貯金や不動産の名義変更などの手続きを進めていきます。

 

まとめ

遺言書は法定相続に優先するので、遺言書がある場合は基本的に遺言書に従って手続を行います。その遺言書にはいくつかの種類があり、それぞれの遺言書によって必要な手続きが異なります。遺言書による相続手続きは難しいことや手間のかかることが多々あります。どうすればいいのか分からない、不安だ、という時は専門家に相談することをおすすめいたします。