所有権保存登記とは

所有権保存登記とは、新築した建物や未登記の土地の所有者が誰であるかを登記記録に記録するために行う登記のことです。 例えば新しく家を建てた場合、建物がどのような建物かという物理的状態を記録する表題登記を法務局に行います。続いて所有者が誰であるかを登記記録に記録するために所有権保存登記が行います。

建物表題登記は建物完成後1ヶ月以内に申請する義務がありますが、所有権保存登記には申請義務はありません。ですから保存登記をしなくても罰則などはありません。ですが、保存登記がされないと所有者の公示がされないため、不動産の売買や相続による名義変更、不動産を担保に融資を受ける場合に行う抵当権設定登記などを行うことができません。

所有権保存登記に必要なもの

所有権保存登記に必要なものは、つぎのとおりとなります。

  • 登記申請書

  • 不動産所有者の住民票

  • 認印

所有権保存登記の登録免許税は評価額の0.4%ですが、一定の条件を満たすと軽減措置が適用され0.15%になります。 司法書士に依頼される場合は、これらの他に委任状と司法書士報酬が必要になります。

売買による所有権移転登記とは

土地や建物の不動産を購入したり売る時には不動産の名義人を変更する手続きが必要で、これを所有権移転登記と言います。不動産の売買契約を交わしても登記名義が自動的に移ることはなく、名義変更をする所有権移転登記を法務局に申請する必要があります。 売主と買主が近しい間柄の場合は売買契約成立後に不動産仲介業者を介さず双方で直接登記手続きをする場合もありますが、不動産仲介業者を通して不動産を売買する場合は、登記の専門家である司法書士が登記手続きを行うことが一般的です。通常の不動産取引では売買代金が高額になるので、売買契約書に代金の受け渡しと同時に所有権が移転する旨の内容の特約をつけることが多く、売買代金の受け渡しが無事に済んだらその日のうちに司法書士が法務局に所有権移転登記を申請します。

売買による所有権移転登記に必要なもの

登記申請には買主側と売主側でそれぞれに必要な書類などが異なります。

買主

  • 住民票

  • 認印

  • 運転免許証などの身分証明書

売主

  • 不動産の登記済権利証または登記識別情報

  • 印鑑証明証(3ヶ月以内のもの)

  • 実印

  • 不動産の固定資産税評価証明書

  • 運転免許証などの身分証明書

売主が、不動産の登記済権利証または登記識別情報を失くしている場合は、特別な手続きが必要になります。 売主の登記記録上の住所と印鑑証明書上の住所が異なる場合は、売買による所有権移転登記をする前提として売主の住所変更登記を申請する必要があります。

売買による所有権移転に伴う登録免許税

不動産を売買して所有権移転登記をする際には必ず登録免許税がかかります。後払いではなく登記を申請する際に同時に支払う必要があり、登録免許税の支払いがない場合は申請が却下されるので間違いなく準備をしておきましょう。 登録免許税の税率は原則的に固定資産税評価額の2%ですが、土地については現在、軽減措置があり1.5%になっています。また建物においても一定の要件を満たす場合は住宅用家屋証明を取得すると0.3%となります。売買予定の不動産が軽減措置の対象にあたるかどうか分からない場合は、司法書士などの専門家に相談しましょう。

離婚の財産分与による所有権移転登記とは

財産分与とは、婚姻生活中に夫婦で共に築き上げた財産を、離婚する際または離婚後に分けることをいいます。法律で認められている権利で、離婚の相手方に財産の分与を請求することができ、分与した財産が家などの不動産である場合は財産分与による所有権移転登記をします。 財産分与による登記手続きは、所有者である財産分与をする者と、財産分与を受ける者が共同で申請する場合と、裁判所の調停調書等により財産分与を受ける者が単独でする場合があります。申請の時期は離婚が成立した後です。 そのため、協議離婚の場合は離婚届を役所に提出した後に登記手続きをしようとしても、相手方とのコンタクトや協力を得ることが難しい場合があります。ですから、離婚協議で財産分与の内容について取り決めをしたら、離婚届を提出してすぐに財産分与の手続きができるように必要書類の準備を事前に進めておくことが重要です。離婚で不動産の財産分与を考えている方は、離婚届を出してしまう前に司法書士などの専門家にご相談されることをおすすめいたします。

離婚の財産分与による所有権移転登記の必要書類など

財産分与による所有権移転登記で必要な書類は、協議離婚の場合と裁判上の離婚の場合で多少異なります。

協議離婚による財産分与に必要なもの

協議離婚の場合は、財産分与をする登記義務者、財産分与を受ける登記権利者の両者が共同で登記の申請を行います。一般的な必要書類は次のとおりです。

財産分与を受ける登記権利者

  • 住民票

  • 認印

  • 運転免許証などの身分証明書

財産分与をする登記義務者

  • 不動産の登記済権利証または登記識別情報

  • 印鑑証明証(3ヶ月以内のもの)

  • 実印

  • 固定資産評価証明書

  • 離婚の記載のある戸籍謄本

  • 運転免許証などの身分証明書

財産分与する登記義務者の住所・氏名について、登記簿上の住所・氏名が印鑑証明書の住所・氏名と異なる場合は変更登記が必要になります。住所変更の経緯がわかる住民票又は戸籍の附票、氏名の変更がわかる戸籍謄本を準備し所有権登記名義人住所氏名の変更登記を行います。その後に財産分与による所有権移転登記手続をします。

裁判上の離婚による財産分与に必要なもの

調停・審判・訴訟などの裁判上の離婚の場合は財産分与を受ける者が単独で登記の申請をすることができます。 財産分与を受ける者が単独申請することができるのは、調停調書等に次のような内容の記載がある場合です。

「申立人は,相手方に対し,本件離婚に伴う財産分与として,別紙物件目録記載の不動産を分与し,本日付け財産分与を原因とする所有権移転登記手続をする。

上記のように「所有権移転登記手続をする」旨の記載が必要になります。 財産分与を受ける者が単独申請ができる場合に必要なものは、次のとおりとなります。

  • 登記原因証明情報(調停調書、審判所、和解調書など)

  • 住民票

  • 認印

  • 固定資産評価証明書

財産分与する者の登記記録上の住所が、調停調書等に記載の住所と異なる場合は住所変更登記が必要になりますが、この住所変更登記も相手方の協力は必要なく財産分与を受ける者が単独で行うことができます(代位による登記)。また、氏が異なっている場合も同じく事前の変更登記が必要になります。その後に財産分与による所有権移転登記をします。

財産分与による所有権移転登記の注意点

財産分与による所有権移転登記については下記の点にご注意ください。

財産分与の日付

登記申請の際に申請書に記載する財産分与の日付は財産分与の協議が成立した日です。 ですが、離婚成立前に財産分与の協議が成立していた場合は、離婚が成立した日が財産分与の日付となります。

住宅ローンが残っている場合

住宅ローンが残っている家を財産分与しようとする場合は簡単な話ではなくなります。 例えば夫が家の名義人で、かつ、住宅ローンの債務者であり、離婚によりこの家を妻に財産分与することとしたとします。「金銭消費貸借契約書」には一般的に「抵当物件を譲渡する際には事前に銀行の承諾を得なければならない」旨の規定が定められているため、銀行などの借入先の承諾が必要になりますが、収入面などの問題により承諾が下りないケースが多いです。

離婚公正証書を作成しておく

協議離婚をする際に、財産分与や養育費、慰謝料の話し合いをする場合は、離婚協議書を公正証書で作成することをおすすめいたします。このような離婚給付契約について取り決めた公正証書があれば、支払いが行われたなった場合はすぐに相手方の財産を差し押さえることができます。ただし、公正証書を作成しても不動産の名義変更手続きにおいては、分与者である相手方の協力が必要ですので事前の準備が重要になりなす。

税金

財産分与として土地や建物といった不動産の名義変更をした場合、一般的に贈与税はかかりません。財産分与は贈与ではなく夫婦の財産の精算やその後の生活保障のために給付を受けたものと考えられているからです。不動産取得税については夫婦財産の清算目的であれば課せられませんが、清算目的ではなく慰謝料や離婚後の扶養を目的とする場合には課せられます。ただし、この場合でも居住用の不動産であれば不動産取得税の軽減措置を受けられるケースが多いです。財産分与した者には譲渡所得税がかかります。ただし、離婚後に居住用の不動産を譲渡した場合には特別控除の特例の制度があります。