民法(債権法)改正(2020年4月1日施行)
民法(債権法)の改正が2020年4月1日から施行されました。民法(債権法)が制定されてから約120年間ほとんど改正されず、今回大掛かりな改正が行われたのでかなりのボリュームですが、その中からいくつか取り上げます。
売買契約について
改正前の民法では、売買契約を解除するためには、債務を履行することができなかった者に帰責事由があることが必要でしたが、今回の改正で、債務を履行しなかった者に帰責事由がない場合でも、売買契約を解除することができるようになりました。(改正民法第543条)
債務の履行を受ける者は、債務の履行がされなければ、契約を解除して、新しい契約先を探すことができます。
保証契約について
個人(会社、法人を除く。)が、一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(根保証契約)を締結する場合には、保証人が責任を負う上限の金額(極度額)を定めなければ、その根保証契約は無効となります。(改正民法第465条の2)
例えば、住宅等の賃貸借契約の保証人が締結する契約は、根保証契約に該当するため、極度額を定めなければその契約は無効となります。
公証人による保証意思確認の手続きが新設されました。(改正民法第465条の6)
個人が事業用融資の保証人になろうとする場合において、新設された公証人による保証意思確認手続きを経なかった場合には、その保証契約は無効となります。
【公証人による保証意思確認の手続きが不要な場合】(改正民法第465条の9)
- 主債務者が法人である場合 → その法人の取締役、理事、執行役、議決権の過半数を有する株主等
が保証人になる場合 - 主債務者が個人である場合 → 主債務者と共同して事業を行っている者、主債務者の事業に従事している主債務者の配偶者
が保証人になる場合
約款(定型約款)について
今回の改正まで民法は、事業者が定めた約款を用いた取引について基本的なルールが定められていませんでしたが、今回の改正で定型約款についてルールが定められました。(改正民法第548条の2~第548条の4)
事業者の相手方が定型約款の内容を認識していなくても、当事者間でその定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたときや、あらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたときは、個別の条項について合意したものとみなされます。ただし、相手方の利益を一方的に害するようなものは合意とはみなされません。
法定利率について
改正前の民法では年5%だった法定利率が、今回の改正で年3%に引き下げられました。また、市中の金利動向に合わせて法定利率が変動する仕組みが導入されました。(改正民法第404条)
消滅時効について
改正前の民法の債権の消滅時効は、原則10年として、例外的に職業別により短期の消滅時効(医師の診療報酬3年など)が設けられていましたが、今回の改正で職業別の短期消滅時効を廃止し、原則として5年となりました。(改正民法第166条)
ただし、債権者が自分が権利を行使することができることを知らない場合には、権利を行使することができる時から10年となります。
消費貸借契約について
後日金銭を交付する内容の金銭消費貸借契約を書面で締結した場合に、借主は目的物を受け取るまでは契約を解除することができます。ただし、借主が解除することによって、貸主に損害が発生した場合は、貸主は借主に対し、その損害賠償を請求することができます。(改正民法第587条の2第2項)
賃貸借契約について
改正前の民法では、賃貸借契約における原状回復や敷金についての規定が定めてありませんでしたが、今回の改正で明文化されました。
【原状回復】
- 賃貸借が終了した場合、賃借人は、賃借物を受け取った後に生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた損耗及び経年劣化を除く。)がある場合は、その損傷を原状回復する義務を負います。ただし、その損傷が賃借人の責任でない場合は除きます。(改正民法第621条)
【敷金】
- 賃貸借が終了して賃貸物の返還を受けたときに、賃貸人は賃料などの債務を差し引いた残額を返還しなければなりません。(改正民法第622条の2)